図書館での自習ってしてもいいの?賛否両論ある現状


投稿日:2017年10月07日


概要

公共図書館で「館内の雑誌や本を座ってゆっくり読みたいのに、全然席が空いてない!」という経験をなさったこと、ありませんか。
公共図書館に行くと、受験や資格取得のための自習をする学生や社会人で閲覧席が埋まっている光景を目にすることも多いと思います。
一見自然なことのように思われる公共図書館の閲覧席での自習。ですが、実は、昔から図書館での自習については、その是非をめぐって論争が繰り返されているのです。
今回は、なかなか根深い問題・図書館をめぐる自習について、お話したいと思います。

トピック

  1. 自習スペースとして図書館は快適な環境、ではありますが…
  2. 図書館側は、自習には否定的
  3. 1970年代にもあった、「図書館での自習の是非」論争
  4. 図書館によって対応は様々

自習スペースとして図書館は快適な環境、ではありますが…

街のチェーン店のカフェやファミレスなどでも自習する人をみかけますが、図書館ほどたくさんいるわけではありません。
カフェやファミレスでは何か注文しないといけないですし、BGMや他のお客さんの会話やキッチンの音など、様々な雑音も聞こえてきます。静かなところでないと集中できない!という方は、この時点で自習はあきらめるかもしれません。
それに、当然飲食店の席なので、ワンオーダーで何時間もいるわけにもいかないという意識も働きますよね。色々雑念に駆られてしまって、落ち着いて自習できないという方もいらっしゃるのではないかと思います。
その点、図書館はBGMも流れていませんし、席が取れれば長居しても怒られることもありません。もし調べ物が必要になれば、すぐに辞書や参考図書を使えるシチュエーションもありがたいですし、何より無料で使えるのがいちばんの魅力ではないでしょうか。
こう考えると、図書館は自習スペースにぴったり!と多くの人が自習スペースとして利用する気持ちもわからないではありません。
ただ、大前提として、図書館という場所は「利用者に本を提供する」ことをメインのサービスとしている場所です。
「図書館に本を読みに来たのに、閲覧席を持ち込みの勉強をしている人たちに席を占領されてしまっていて、読書する席がない!」という状況はいかがなものか、本末転倒ではないですか?という考え方もありますよね。
学生なら、学校で勉強すればいいじゃないか、という苦情もあるそうですが、最近は、安全面などから放課後は速やかに帰るよう促されたり、休日は学校も休みで入れない、家では集中できないし…といった事情もあるようで、なかなか一筋縄ではいかないようです。

図書館側は、自習には否定的

日本の図書館の大元締めともいえる、日本図書館協会という団体があります。日本図書館協会は、公共図書館だけでなく、専門図書館や大学図書館など、日本中の様々なタイプの図書館が加入している、大きな団体です。
その団体のホームページに『公共図書館の任務と目標』という文書が掲載されています。ちなみに、現在掲載されているものは2004年3月に改訂されたものですが、こちらが最新のものです。
『公共図書館の任務と目標』のなかの「図書館サービス」という項の16番目に、こんな文言があります。
「席借りのみの自習は図書館の本質的機能ではない。自習室の設置は、むしろ図書館サービスの遂行を妨げることになる。」
きっぱり言い切っていますね。確かに、自習は図書館の本質的機能ではないですが、ここまで言い切られると…。
でも、このような文書があるということは、図書館にとって、自習席問題は大きい問題だということですよね。
とりあえず、図書館のスタンスとしては「図書館での自習、お断り」ということなんだな、ということがよくわかる文書です。

1970年代にもあった、「図書館での自習の是非」論争

1973年2月2日の朝日新聞に、国会図書館が教科書の持ち込みを禁止して、学生からブーイングが出たという記事が掲載されています。
この頃の日本の大学は紛争が続いていて、真面目に勉強したいのに学校で満足に勉強できない学生が、自習の場所に困っていたようです。
教科書を持って国会図書館に勉強しに来る学生さんが増え、閲覧席問題が発生したのでしょう。そこで国会図書館が「教科書持ち込み禁止」というおふれを出したところ、学生から苦情が来た、というような内容です。
国会図書館の苦悩も学生の困惑もわかるような気がしますが、どちらが正しいかと言われると…難しい問題ですね。

図書館によって対応は様々

大元締めの日本図書館協会の見解は、公共図書館での自習には否定的なものですが、やはり現場ではそうも言っていられない、というのが実情のようです。
昔の国会図書館のように「教科書持ち込み禁止」といったルールをつくるのでなく、実質的に自習ができない環境にしてしまう、という方法で対応している図書館もあります。例えば、リニューアルを機に閲覧机をあえて減らして自習できないようにする、というような事例ですね。
一方で、閲覧席と自習席を分けて作ることで問題解決を図ろうとする図書館や、「持ち込みの勉強OKです」とホームページのQ&Aに掲載している図書館もあるんですよね。

おわりに

公共図書館の自習問題に関しては、答えはひとつに絞りきれていないというのが現状です。
対応も、館によってまちまちですが、公共図書館で席が取れない、という住民からの声を受けて、公共施設の中で空いている会議室などを自習スペースとして住民に開放している自治体もあります。
住民の「学びたい」向上心は、長い目で見ると自治体の質を上げるパワーにつながると考えることもできますよね。
「学びたい」気持ちが、場所がないことによってしぼんでしまうのはもったいないことです。
自習できる場所にまつわる問題は、公共図書館だけに丸投げするのではなく、もっと行政も積極的に関わって解決策を探るべきものかもしれません。

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